2011年10月10日
現代へと続く海の道(仮題)41
白宮は勇人を送ったあと、荒川に電話した。
「白宮さん。今日ねえ、帰りにあいさつに寄ったらねえ、校長がなんて言ったと思う? 船をさあ、秋の運動会までに完成できないか? って言うんだよ」
荒川の声ははずんでいた。白宮は意味が分からない。
「運動会って、10月でしょ。今の調子ならそんなあわてなくても出来ますよね」
「そうじゃないよ。急かされてんじゃなくて、運動会の閉会式のときに船の進水式したいってさ。なんかさあ、晴れ舞台作ってもらって、うれしいじゃないか。運動会のあとの夕凪に船出だぞ」
荒川はまいあがったままだった。
「じゃあ、船をいいものにするためにも、神島へ行きましょうね。本物の船を見ておかないと。明日、勇人くんも誘ってみましょう」
白宮が電話を切ると、勇人の弓道の師匠からすぐにかかってきた。こちらはちょっと沈んだ声だった。何か心配があるらしい。
「白宮さん。あのう、こんなことを私が言うのも、変なんだが、勇人くんの学校はどんなどんな感じなんだね。いや、そのう、取り越し苦労かも知れんというか、そうだったらいいんだが、彼はイジメにあってないかね」
勇人の師匠である社長は、言葉を一つずつ選んでいるのが電話でもよく分かる。白宮は前に勇人がイジメにあっていたこと、荒川といっしょに授業に出るようになって、少しおさまったこと、そして担任から少し距離をおくように言われたことを説明した。
「そうか。あんたたちが、もう手は打っているんだな。そんならいいが、実は今日古い弓道着を出してきて、着せてみたんだよ。その時に目についたんだが、腹に丸く色の変わっているところがあった。本人は転んだと言っていたが、あれは殴られたあとだと思う。それと、肩に、これは小さいんだが、魚の形のアザがあった」
それを聞いて、白宮は校庭に船をつくっていること、双眼鏡で見ていることを説明した。勇人の師匠が一安心すると、白宮は自分にもアザがあったことを話した。
「里見八犬伝みたいですな。あれは、ボタンのアザでしたな。それにしても船は楽しそうだ。私も言っていいですかな」
「勇人くん。社長がいらっしゃれば喜びますよ」
白宮言って電話を切った。
「白宮さん。今日ねえ、帰りにあいさつに寄ったらねえ、校長がなんて言ったと思う? 船をさあ、秋の運動会までに完成できないか? って言うんだよ」
荒川の声ははずんでいた。白宮は意味が分からない。
「運動会って、10月でしょ。今の調子ならそんなあわてなくても出来ますよね」
「そうじゃないよ。急かされてんじゃなくて、運動会の閉会式のときに船の進水式したいってさ。なんかさあ、晴れ舞台作ってもらって、うれしいじゃないか。運動会のあとの夕凪に船出だぞ」
荒川はまいあがったままだった。
「じゃあ、船をいいものにするためにも、神島へ行きましょうね。本物の船を見ておかないと。明日、勇人くんも誘ってみましょう」
白宮が電話を切ると、勇人の弓道の師匠からすぐにかかってきた。こちらはちょっと沈んだ声だった。何か心配があるらしい。
「白宮さん。あのう、こんなことを私が言うのも、変なんだが、勇人くんの学校はどんなどんな感じなんだね。いや、そのう、取り越し苦労かも知れんというか、そうだったらいいんだが、彼はイジメにあってないかね」
勇人の師匠である社長は、言葉を一つずつ選んでいるのが電話でもよく分かる。白宮は前に勇人がイジメにあっていたこと、荒川といっしょに授業に出るようになって、少しおさまったこと、そして担任から少し距離をおくように言われたことを説明した。
「そうか。あんたたちが、もう手は打っているんだな。そんならいいが、実は今日古い弓道着を出してきて、着せてみたんだよ。その時に目についたんだが、腹に丸く色の変わっているところがあった。本人は転んだと言っていたが、あれは殴られたあとだと思う。それと、肩に、これは小さいんだが、魚の形のアザがあった」
それを聞いて、白宮は校庭に船をつくっていること、双眼鏡で見ていることを説明した。勇人の師匠が一安心すると、白宮は自分にもアザがあったことを話した。
「里見八犬伝みたいですな。あれは、ボタンのアザでしたな。それにしても船は楽しそうだ。私も言っていいですかな」
「勇人くん。社長がいらっしゃれば喜びますよ」
白宮言って電話を切った。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 20:11│Comments(0)
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