2012年02月12日
青い炎を灯せ26
明江が部屋を出ると、宇合が待っていた。待ちくたびれたのか不機嫌そうに明江を見た。
「光明子、おまえ最近ほんとどうかしてるぞ。左大臣と二人っきりって、何話してたんだ? 長屋王と」
「なにがって、そんなこといちいち報告しなくちゃいけないの?」
明江は宇合を見返した。宇合がちょっとひるむ。
「いや、あの。報告って、そんな大げさなことじゃなくて、おれ達、兄と妹だろ。それにここへ連れてきたのはおれだぞ」
宇合の言い方は尻切れトンボに弱くなった。明江は笑みを浮かべて軽く頭を下げると先に歩き出した。馬を引きながら宇合が追いかける。
「光明子。ちょっと待てよ。天子さまの夫人になってから、ほんと態度でかいなあ。おまえは藤原氏のために、天子さまのそばにいるのを忘れるなよ」
宇合は明江の前に立ってそれだけ言うと馬に乗って先に行ってしまった。ほっとしていると、天子付きの女官が現れ深く頭を下げた。
「光明子さま。天子さまが先ほどからお探しです。急いでお戻り下さい」
女官に手を引かれて、早足で清涼殿にもどると薄布の向こうで天皇がうろうろ歩き回っていた。
「光明子。もどったか。よかった。怨霊じゃ。どうしよう。大津の皇子の怨霊が出ているらしい」
薄布の中へ明江が入るのも待ちかねて、天皇がまとわりついてきた。明江は長屋王を思い出し、同じ男でもこんなに違うかと思った。それでも、気を取り直して天皇の背中に手をおいた。
「猿沢の池の脇で、夜になると人魂が飛ぶらしい。人は飛び火野と呼んでいるらしい」
天皇は声が震えている。
「天子様。長屋王が、怨霊と話しているそうです。大丈夫ですよ」
明江が言うと、天皇はちょっと明るい顔になったが、すぐにまた青い顔になった。
「長屋王。融通がきかん。あの男が怨霊と話せるはずがない。やっぱりコワイ。どこか旅行に行きたい」
そういって、天皇は泣き出した。明江はまわりをきょろきょろ見回してから、天皇の耳元でささやいた。
「天子さま。明日からご病気になったらいかがですか」
「病気に?」
天皇は不思議そうに明江を見た。
「そう。明日の朝会議が終わったらねえ、いつものようにお坊さんの格好してぬけだして。それで三河丸って憶えてる? この前あった若い子。あの子といっしょに2.3日旅行に行ったらいい。ここの女官たちには、病気で朝会議に出られないってごまかしておくから」
明江が言って、天皇はやっと笑顔になった。そしてその夜は朝まで明江をだきしめて離れなかった。
「光明子、おまえ最近ほんとどうかしてるぞ。左大臣と二人っきりって、何話してたんだ? 長屋王と」
「なにがって、そんなこといちいち報告しなくちゃいけないの?」
明江は宇合を見返した。宇合がちょっとひるむ。
「いや、あの。報告って、そんな大げさなことじゃなくて、おれ達、兄と妹だろ。それにここへ連れてきたのはおれだぞ」
宇合の言い方は尻切れトンボに弱くなった。明江は笑みを浮かべて軽く頭を下げると先に歩き出した。馬を引きながら宇合が追いかける。
「光明子。ちょっと待てよ。天子さまの夫人になってから、ほんと態度でかいなあ。おまえは藤原氏のために、天子さまのそばにいるのを忘れるなよ」
宇合は明江の前に立ってそれだけ言うと馬に乗って先に行ってしまった。ほっとしていると、天子付きの女官が現れ深く頭を下げた。
「光明子さま。天子さまが先ほどからお探しです。急いでお戻り下さい」
女官に手を引かれて、早足で清涼殿にもどると薄布の向こうで天皇がうろうろ歩き回っていた。
「光明子。もどったか。よかった。怨霊じゃ。どうしよう。大津の皇子の怨霊が出ているらしい」
薄布の中へ明江が入るのも待ちかねて、天皇がまとわりついてきた。明江は長屋王を思い出し、同じ男でもこんなに違うかと思った。それでも、気を取り直して天皇の背中に手をおいた。
「猿沢の池の脇で、夜になると人魂が飛ぶらしい。人は飛び火野と呼んでいるらしい」
天皇は声が震えている。
「天子様。長屋王が、怨霊と話しているそうです。大丈夫ですよ」
明江が言うと、天皇はちょっと明るい顔になったが、すぐにまた青い顔になった。
「長屋王。融通がきかん。あの男が怨霊と話せるはずがない。やっぱりコワイ。どこか旅行に行きたい」
そういって、天皇は泣き出した。明江はまわりをきょろきょろ見回してから、天皇の耳元でささやいた。
「天子さま。明日からご病気になったらいかがですか」
「病気に?」
天皇は不思議そうに明江を見た。
「そう。明日の朝会議が終わったらねえ、いつものようにお坊さんの格好してぬけだして。それで三河丸って憶えてる? この前あった若い子。あの子といっしょに2.3日旅行に行ったらいい。ここの女官たちには、病気で朝会議に出られないってごまかしておくから」
明江が言って、天皇はやっと笑顔になった。そしてその夜は朝まで明江をだきしめて離れなかった。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 23:04│Comments(0)