2012年02月22日

青い炎を灯せ31

「長屋王。あなたの言っていることは正しいかも知れない。でもね、こうして、あなたは大きなお屋敷に住んでいて、おいしいものを食べていて、おまけに広い土地の中に池まで作って、こんな贅沢をしておいて、民のためなんていえるの?」
 明江は強い口調でつめよった。長屋王はいっしゅんうつむいた。それから、明江をじっと見た。
「光明子さま。あなたはすばらしい。ですが、一つだけ弁解させていただければ、私があなたを皇后にしたくない理由は、あなたが皇族でないとか、そんなことではないのです。それだけは信じていただきたい」
 言いながら、明江をじっと見つめた。その瞳には深い悲しみが宿っている。それがよけいに明江をいらだたせた。
「いいわ。あなたがそう言うんなら信じてあげる。じゃあ、この池は何? 広い庭は贅沢じゃないの?」
 明江が伸び上がって長屋王の顔をにらんだ。
「ここの池には、鶴がおります。平城宮を建てるときに、いくつも沼地をつぶしました。その消えた沼地に飛んでくるはずだった鶴をここで季節が変わるまでおいております。池には沼地にいた魚が入れてあります。都をうつすことで苦しんだのは人間だけではないのです」
 長屋王は深く頭を下げた。明江は21世紀にいた時のことを思い出した。環境保護とか言ってビオトープを作ったりしているのに似ていると思った。
「光明子さま。あなたは藤原氏らしくない。お兄上たちと少しも似ていない。どうかそのままいらしてください。そのためには皇后になっていただくわけにはいかない」
 長屋王はじっと明江を見つめた。明江の喉の奥に熱いものがこみあげてきてなぜか声をあげて泣いてしまった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 22:19│Comments(0)
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