2012年03月19日
青い炎を灯せ44
「あのう。私たちのお世話になにか落ち度がありましたら、お詫びして、あらためさせていただきます」
女官が顔色を変えた。一ッ歩下がって深く頭をさげた。この時代にはお腹に子どもができて実家へ帰る習慣はないらしい。時代と言うより、皇后という立場で食事から身の回りの世話までしてもらっていれば、わざわざ実家に帰る必要はないかも知れないとあらためて思った。
「ごめんなさい。そんなんじゃないの。あなた方のお世話には感謝しています。ただ、これから母親になると思ったら急に自分が子どものころのことを思い出して、ちょっと帰ってみたくなっただけ。子どものころに」
明江が笑顔をうかべると、女官ははじめて安心した顔になって出ていった。
ひとりになると、明江はたまらない寂しさに襲われた。子どもをつくるということは、なんだか、この時代につなぎとめれるような気がした。もし21世紀にもどれたとしても思いを残してしまう気がした。出来るならこの子が生まれないうちに21世紀にもどりたい。そんなことを思ったら長屋王に会いたくなった。前にふしぎな魔術のようなもので大津の皇子を追い払っていたのを思い出した。その瞬間、部屋の中なのに、黒い雲が現れ空気が渦をまきはじめた。黒いはねが飛び交い明江のまわりをまわった。
明江は思わずその場にうずくまった。女官を呼ぼうとしても声がでない。空気のうずはごーごーと音をたててまわった。
「光明皇后よ。苦しむがいい。おまえの体には苦しみのタネが入ったのだ。苦しむがいい」
太い男の声が明江のまわりをまわった。
「あなたは誰?」
明江は声にならない声で叫んだ。
「私はおまえだ。おまえの心だ」
男の声が言った。明江が耳をふさぎお腹をかばうと声が耳元へ寄ってきた。
「楽しみにしておれ。おまえは苦しむのだ」
気を失いそうになりながら、明江はその声を聞いた。そして遠くで雷の音がして声は去った。気がつくと空気の渦は去り体の横に白いはねが落ちていた。
女官が顔色を変えた。一ッ歩下がって深く頭をさげた。この時代にはお腹に子どもができて実家へ帰る習慣はないらしい。時代と言うより、皇后という立場で食事から身の回りの世話までしてもらっていれば、わざわざ実家に帰る必要はないかも知れないとあらためて思った。
「ごめんなさい。そんなんじゃないの。あなた方のお世話には感謝しています。ただ、これから母親になると思ったら急に自分が子どものころのことを思い出して、ちょっと帰ってみたくなっただけ。子どものころに」
明江が笑顔をうかべると、女官ははじめて安心した顔になって出ていった。
ひとりになると、明江はたまらない寂しさに襲われた。子どもをつくるということは、なんだか、この時代につなぎとめれるような気がした。もし21世紀にもどれたとしても思いを残してしまう気がした。出来るならこの子が生まれないうちに21世紀にもどりたい。そんなことを思ったら長屋王に会いたくなった。前にふしぎな魔術のようなもので大津の皇子を追い払っていたのを思い出した。その瞬間、部屋の中なのに、黒い雲が現れ空気が渦をまきはじめた。黒いはねが飛び交い明江のまわりをまわった。
明江は思わずその場にうずくまった。女官を呼ぼうとしても声がでない。空気のうずはごーごーと音をたててまわった。
「光明皇后よ。苦しむがいい。おまえの体には苦しみのタネが入ったのだ。苦しむがいい」
太い男の声が明江のまわりをまわった。
「あなたは誰?」
明江は声にならない声で叫んだ。
「私はおまえだ。おまえの心だ」
男の声が言った。明江が耳をふさぎお腹をかばうと声が耳元へ寄ってきた。
「楽しみにしておれ。おまえは苦しむのだ」
気を失いそうになりながら、明江はその声を聞いた。そして遠くで雷の音がして声は去った。気がつくと空気の渦は去り体の横に白いはねが落ちていた。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:51│Comments(0)