2012年03月22日
青い炎を灯せ47
輿に揺られながら、明江は宇合を思い出していた。人を見下したような顔が浮かんで腹が立った。一方で、明江自身もいつの間にか宇合たちに似てきたような気がした。こうして輿にのることだって、21世紀jからこちらに来たばかりは考えもしなかった。自分の中で何かが変わってきている。まるでガン細胞が正常な細胞をこわしていくように自分のやわらかい部分が浸食されていくのが怖かった。
「皇后様。ご気分でも悪いですか?」
いっしょについてきた三河丸が見あげて声をかけてきた。よほど怖い顔をしていたのだろう。
「ねえ、三河丸。もしも誰かと変わることができたら、天子様とか舎人の親王とかになってみたい?」
明江は小声で聞いた。三河丸は一度おどろいたように見たが、すぐに白い歯を見せて笑った。
「おれ、頭悪いから、そんな難しいこと考えたことないです。だけど、そんな魔法みたいに誰かになっちゃうのはイヤです。おれは今の自分のままでちょっとずつでも、幸せになって行けるのがいいし、いっしょにいる仲間とともに幸せになりたい」
三河丸はそこまで言ってぺこりと頭を下げた。その言葉で明江の中の迷いが消えた。
「三河丸。ありがとう」
明江はそれだけ言ってまっすぐ前を見た。薬師寺の塔が少しずつ近づいてきた。
「皇后様。お体はいいんですか」
薬師寺につくと、若い坊主が出迎え執事を呼びにいった。明江は輿をおりた。
「天子様はどちらですか? 右大臣の宇合もいっしょなら話したいことがあります」
明江はまっすぐ背筋を伸ばした。視線がまっすぐにのびて執事が気圧されたように頭を下げた。そして腰をひくく先に歩き出した。西の塔脇の堂に天皇と宇合がいた。明江はじっと天皇を見た。
「天子様。あなたはこの国の民を幸せにするため、大宇宙から天の恵み地の恵みをあずかっているのではありませんか? ならば、自分だけの思いや、自分の先祖だけのために寺を建てることが正しい道だとお思いですか?」
天皇は泣きそうな顔で宇合に助けを求めて視線を送った。
「光明子。おまえは、目の前しか見えておらんのだ。寺を建て、仏の道を示すことが国のためになり、民を幸せにするのがわからんか」
宇合は明江を指さし強い口調でいった。
「兄さん。仏様はそんな大きなお寺がなければ、道を教えて下さらないんですか。今の生活に困っている人たちはお寺に行って教えを受けるよゆうなんかありませんよ」
明江は静かに言った。宇合はくやしそうに口ごもり、天皇はその場にしゃがみこんで泣き出した。
「ぼくはもういやだ。こんな都、もういやだ。信楽へ行く」
天皇は泣きじゃくりながら言った。信楽と聞いて宇合はきょとんとしたが、明江は思いだした。天皇が前に「ぎょうき」として忍び旅行をしたのを思い出したと気づいた。
「皇后様。ご気分でも悪いですか?」
いっしょについてきた三河丸が見あげて声をかけてきた。よほど怖い顔をしていたのだろう。
「ねえ、三河丸。もしも誰かと変わることができたら、天子様とか舎人の親王とかになってみたい?」
明江は小声で聞いた。三河丸は一度おどろいたように見たが、すぐに白い歯を見せて笑った。
「おれ、頭悪いから、そんな難しいこと考えたことないです。だけど、そんな魔法みたいに誰かになっちゃうのはイヤです。おれは今の自分のままでちょっとずつでも、幸せになって行けるのがいいし、いっしょにいる仲間とともに幸せになりたい」
三河丸はそこまで言ってぺこりと頭を下げた。その言葉で明江の中の迷いが消えた。
「三河丸。ありがとう」
明江はそれだけ言ってまっすぐ前を見た。薬師寺の塔が少しずつ近づいてきた。
「皇后様。お体はいいんですか」
薬師寺につくと、若い坊主が出迎え執事を呼びにいった。明江は輿をおりた。
「天子様はどちらですか? 右大臣の宇合もいっしょなら話したいことがあります」
明江はまっすぐ背筋を伸ばした。視線がまっすぐにのびて執事が気圧されたように頭を下げた。そして腰をひくく先に歩き出した。西の塔脇の堂に天皇と宇合がいた。明江はじっと天皇を見た。
「天子様。あなたはこの国の民を幸せにするため、大宇宙から天の恵み地の恵みをあずかっているのではありませんか? ならば、自分だけの思いや、自分の先祖だけのために寺を建てることが正しい道だとお思いですか?」
天皇は泣きそうな顔で宇合に助けを求めて視線を送った。
「光明子。おまえは、目の前しか見えておらんのだ。寺を建て、仏の道を示すことが国のためになり、民を幸せにするのがわからんか」
宇合は明江を指さし強い口調でいった。
「兄さん。仏様はそんな大きなお寺がなければ、道を教えて下さらないんですか。今の生活に困っている人たちはお寺に行って教えを受けるよゆうなんかありませんよ」
明江は静かに言った。宇合はくやしそうに口ごもり、天皇はその場にしゃがみこんで泣き出した。
「ぼくはもういやだ。こんな都、もういやだ。信楽へ行く」
天皇は泣きじゃくりながら言った。信楽と聞いて宇合はきょとんとしたが、明江は思いだした。天皇が前に「ぎょうき」として忍び旅行をしたのを思い出したと気づいた。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:10│Comments(0)