2012年04月04日

青い炎を灯せ54

 明江は天皇といっしょに、やせこけた男の後をついていった。朱雀大路を南進し、薬師寺を超えたあたりで男は立ち止まった。
「行基様。このあたりが私たちが作った畑です。日照りが続くとすぐにダメになります」
 男が説明している間に、妻らしい女と子ども、それに何人かの男が出てきた。
「この者たちは、先月熊野から呼び寄せました」
 男が紹介すると、男たちは頭を下げた。明江が横から口をはさむ。
「あなたたち、都に来たばかりなの? じゃあ、天子様の顔は知らないよね」
 明江が聞くと男達はびっくりしたように首を振った。なぜ、そんなことを聞かれるのか不思議に思ったらしい。光明皇后の姿をした明江と当たり前に話しているのだから、そのへんの知識はないのもうなずける。
「よかった。行基さん。網笠とりなさいよ」
 明江は言いながら天皇の編み笠をとった。色の白い細面が明るいところで見ると妙に神々しい。男達はじっと天皇をみた。
「行基様。思ったより若いんだな。かわいい顔してる」
 法華寺から連れてきた男が顔をのぞきこむ。天皇は照れたように笑った。それから、近くにあった鍬をとった。
「みなさん。これから、池を掘りましょう。このあたりはもともと湿地帯ですから、少し掘れば水がわいてきます。それを貯めるんです」
 天皇は自ら穴を掘り始めた。男達もいっしょに掘り始めた。明江はほほえましく見ていた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 11:16│Comments(0)
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