2012年04月27日

青い炎を灯せ63

「兄さんって、いつもそうね。藤原氏ふじわしって、そんなに家が大事なの? 行基とかいうお坊さんは、自分や家のためじゃなくて、大勢の人のために働いているんでしょ?」
 明江は宇合をじっと見た。宇合は一度苦虫をかみつぶしてからいやな笑顔をうかべた。
「おまえはほんとに分かってないなあ。皇后にするのにどれだけ苦労したと思うんだ。おまえは知らないだろうがなあ、おじいさんの鎌足様がどれだけ苦労したと思う」
 宇合は明江のまわりをくるりとまわった。大化の改新の時に当時、中臣氏だった鎌足が中大兄皇子にとりいったことを言っているのだろう。そのぐらいは明江にも分かった。明江はなんとか平静をとりもどした。
「ねえ、兄さん。私を皇后にして、その行基とかいうお坊さんを養子にしたとして、そうやって藤原氏が偉くなっても、国が滅びてしまったらなんにもならないでしょ。みんなが不幸になってめちゃくちゃな国になったら唐だって、今までみたいに仲良くしてくれないでしょ」
 明江は一言ずつかみしめるように言った。母親が子どもに諭しているようだった。宇合もしかられた子どもみたいな顔になる。
「光明子。おまえ変わったよなあ。最近言うことが長屋王に似てきた」
 宇合はつぶやいた。それから明江を見た。
「まあ、おまえの言うことはわかった。天子様がこっちへ来られたら、信楽へもどるように伝えてくれ」
 宇合は言って出ていった。明江はため息をついた。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 07:43│Comments(0)
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