2012年04月28日

青い炎を灯せ64

 宇合が帰って行くと、明江は体が重くなったような気がしてきた。遠くの方で誰かの声がする。怖くなった明江は少しふくらみはじめたお腹をさすった。かすかに動いた気がする。思えばお腹に子どもが宿ったと言われてから、もう一月になる。
「何ヶ月目なんだろう? 21世紀なら産科の医者にいって超音波でみてもらうころだろうか」
 明江がつぶやいているのを聞いたのか、年輩の女官が頭を下げながら入ってきた。
「皇后様。お大事になさってください。今いちばん大切な時ですから」
 女官はゆったりと笑顔を見せた。そして続けた。
「来年の春には、皇子様がお生まれになりますね」
「ありがとう。気をつけるね」
 明江が微笑むと女官は安心したのか下がっていった。そのまま明江は眠った。

 目がさめると、枕元に天皇がいた。僧の形でなく天皇の衣装を着ている。
「天子様。宇合がさがしていましたよ。ちゃんと行き先を言ってきたんですか?」
 明江が言うと、天皇は声を上げてなきだした。明江の胸に飛び込んでくる。
「いったい、なにがあったのよ」
 明江は天皇の背中をさすった。
「信楽の近くで、井戸を掘っていたんだ。行基のすがたで。そうしたら、急に長屋王たちが来て顔を見られそうになったから逃げたんだ。そうしたら、いっしょに掘っていた農民がつかまった。どうしよう。あの人たち殺されるかも知れない」
 天皇はなきながら訴えた。明江はだまって立ち上がった。
「天子様。あなたはすぐに信楽へ帰ってください。それからしばらくは行基になってはいけません。長屋王には私から話します」
 そう言って、女官を呼び天皇を帰らせた。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 06:39│Comments(0)
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