2012年05月02日

青い炎を灯せ66

 その夜、明江は何度も夢でうなされて女官が心配そうに見に来た。眠りに落ちるとすぐに大津の皇子が夢に現れるのである。真っ暗な夜空に血にまみれた皇子がいやな笑いを浮かべている。
「呪われた子を宿した皇后様。どうか元気なお子さんを産んでください」
 皇子は明江のまわりを飛び回ってから、最後はイナズマになった。明江の大きなお腹に落ちる。そこで必ず目をさました。汗だくになってお腹をかばって目が覚める。枕元には泣きだしそうな顔の女官がいた。
「ごめんなさいね。ちょっと心配なことがあって」
 明江はやっとそれだけ言って目を閉じた。
 なんどかそんなことをくり返して朝を迎えると、明江は輿を用意させて法華寺へ向かった。尼さんたちに混じって三河丸が粥を配っているのが見えた。
「三河丸」
 明江が身をのりだしたので、輿は少し揺れた。三河丸がびっくりしてかけよってくる。
「皇后様。天子様はお元気ですか?」
 輿を担いでいる下級官人に聞こえるようにわざと大きな声で言ってから、輿に近づいて明江の耳元に口をよせた。
「行基様のことがいろいろなところで話題になっています。宇合様が色々調べているようです。何人か農民もつかまったようです」
 三河丸が小声で言った。明江は笑顔で返す。
「長屋王が調べているようです。安心してください」
 明江が微笑んだところへ、舎人の親王が走ってきた。
「皇后様。今、長屋王邸から宇合さまが出てきました。縛られた男が何人かいて、長屋王様と宇合さまが大きな声で話しているのを聞きました。
 それを聞いて明江は昨夜見た夢を思い出した。どうつながるかは分からないが不吉な気がした。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:40│Comments(0)
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