2012年06月10日
青い炎を灯せ88
明江はふとんの中で、眠ったり目覚めたりを何度も繰り返した。枕元には女官が二人交代で座っている。
「皇后様。おかげんはいかがですか?」
目を開けるたびにのぞきこんでくる。そのたびに笑みを浮かべたが、三度目からは内心めんどくさくなっていた。
「天子様は、行幸先からこちらに向かわれるそうです」
夕方になって現れた舎人の親王が言った。明江はうなずいた。
「行基はどうしていますか」
明江が聞くと、舎人の親王は渋い顔をした。
「あの男はあいかわらずすごい人気です。信楽で大勢の農民にかこまれています。お会いになりたいですか」
舎人の親王は何も疑問に思わないらしい。明江は苦笑いしながらうなずいた。
明江はそのまま眠った。夜中に目をさますと、枕元の女官は居眠りをしていた。枕元から聞き慣れた声がする。
「光明子。今帰ったぞ」
明江が目を向けると、僧形の天皇が立っていた。聞くと日が暮れるのを待って信楽を発ったらしい。
「天子様。赤ちゃんが……」
起きあがった明江が言い終わらない内に、天皇は明江の肩を抱いた。
「仕方がないことだが、光明子、そなたは生きていてくれた。なによりだ」
天皇の言葉を聞くと、明江の目から涙がこぼれた。天皇が肩を抱く手に力をこめた。涙といっしょに張っていた心がとけていく、それにつれて今度は怒りがこみあげてきた。
「天子様。あるものが、私に呪いをかけました。お腹が痛くなったときに祈ると言いながら呪ったのです」
明江の言葉に天皇は肩をぴくりとふるわせた。
「それは誰だ」
天皇の声は今まで聞いたこともないほど低く感じた。
「長屋王です」
明江は答えた。
「皇后様。おかげんはいかがですか?」
目を開けるたびにのぞきこんでくる。そのたびに笑みを浮かべたが、三度目からは内心めんどくさくなっていた。
「天子様は、行幸先からこちらに向かわれるそうです」
夕方になって現れた舎人の親王が言った。明江はうなずいた。
「行基はどうしていますか」
明江が聞くと、舎人の親王は渋い顔をした。
「あの男はあいかわらずすごい人気です。信楽で大勢の農民にかこまれています。お会いになりたいですか」
舎人の親王は何も疑問に思わないらしい。明江は苦笑いしながらうなずいた。
明江はそのまま眠った。夜中に目をさますと、枕元の女官は居眠りをしていた。枕元から聞き慣れた声がする。
「光明子。今帰ったぞ」
明江が目を向けると、僧形の天皇が立っていた。聞くと日が暮れるのを待って信楽を発ったらしい。
「天子様。赤ちゃんが……」
起きあがった明江が言い終わらない内に、天皇は明江の肩を抱いた。
「仕方がないことだが、光明子、そなたは生きていてくれた。なによりだ」
天皇の言葉を聞くと、明江の目から涙がこぼれた。天皇が肩を抱く手に力をこめた。涙といっしょに張っていた心がとけていく、それにつれて今度は怒りがこみあげてきた。
「天子様。あるものが、私に呪いをかけました。お腹が痛くなったときに祈ると言いながら呪ったのです」
明江の言葉に天皇は肩をぴくりとふるわせた。
「それは誰だ」
天皇の声は今まで聞いたこともないほど低く感じた。
「長屋王です」
明江は答えた。
Posted by ひらひらヒーラーズ at 19:16│Comments(0)
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