2012年07月01日

青い炎を灯せ93

「そう。過去から現代、そして未来へ続く炎なら、私の子どもはどうなの?」
 明江は長屋王をにらんだままで低い声で言った。まわりの空気が揺れていきそうな感じさえした。
 長屋王は直接答えずに、悲しげな目をして見あげた。明江の目に残酷な光が宿った。
「長屋王。私は、あなたを心のそこから信頼していました。そのあなたに、こんな目に逢わされるなんて」
 言葉を出しながら、明江は涙が声を震わせてはっきりしなくなっていくのにも腹が立った。見上げている長屋王の姿がゆがんでくる。
「皇后様。お力落としはよく分かります。また、私の祈りが足りなくてお救い出来なかったことも承知していますが、人の命ははなかいもの。どうか、お心をお鎮めください」
 長屋王はそう言って、深く頭を下げた。明江の心模様が、悲しみ色から復讐心へと変わっていった。
「よく分かりました。もう、下がってください」
 明江は無表情のまま言った。長屋王がなにか言いたそうにもじもじしながら清涼殿を出ていった。その後ろ姿に明江は独り言をかけた。
「これまでありがとう。でもゆるさない」

 一度ふとんにもどって体を横たえると、明江は女官に頼んで宇合を呼び出してもらった。
 その夕方には、信楽から宇合がやってきた。明江は他の言葉は発せないまま前に立った。
「右大臣、藤原の宇合に申しつける。左大臣、長屋王に謀反の疑いあり。調べた上、相当の処分を申しつける」
 明江のはっきりとした口調に、宇合は一度目を見はってから笑いを浮かべた。
「皇后様。確かにうかがいました」
 宇合はいそいそと出ていった。




Posted by ひらひらヒーラーズ at 06:27│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。