2012年08月19日

青い炎を灯せ119

三蔵がポツリと言った。明江は不思議な思いでそれを聞いた。
一週間がすぎた。三蔵は都にもどった。明江と三河丸が中心になって西へ進めていく。はるかに瀬戸内海が見え始めたころ、太宰府からの早馬で出会った。東人の軍勢が太宰府を制圧したという。明江と三河丸は都へもどることにした。いっしょにいた男達も引き返す。
「あのう。俺たち、このまま、西に進んでもいいですか?」
 都から来た男の一人が明江の前に来て言った。
「都に家族がいるでしょう」
 明江は男の顔をのぞきこんだ。
「今は行基さまのおかげで米がちゃんと取れるようになりました。俺がいなくても妻も子どもも干上がることはありません。だけど、隣村の者たちでさえ、飢えて苦しんでいました。行基様がいくら達者なお坊さんにしても、すぐに全国を回るのは無理です。だったらせめて俺たちが、畑を作ったり水を引いたりの手伝いをして行きたいです」
 男の言うことを聞きながら、明江は目に涙がたまっていた。
「分かりました。それでは、私からお願いします。行基に代わって西の国々を豊かにしてください」
 そう言ってから、土で出来た鈴を出した。男に渡しながら小声で言う。
「地方の官人に会えば、誤解をまねくでしょう。何か言われたら、この鈴を見せて『光明子から頼まれた』と言ってください」
 明江は静かに言って男を送り出した。そして、都へともどっていった。
 




Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:35│Comments(0)
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