2012年12月20日

ひらひら村の夕陽22

「すみません。私としたことが、どうも、読みにくくて……。おかしいなあ、息子さんが連れて来られた女の人って、あんまりいい人ではないですよねえ。さっきのお話だと、ひどい人でしたよねえ」
 裕子の困った顔に同情したのか、女は心配そうに顔をのぞきこむ。
「ひどい人ってまあ、私も、急にお会いしたから、びっくりしてそんな気がしたのかも知れませんが」
「そんなことありませんよ。さっきのお話、私が聞いていても腹が立ってきましたから、ただ、まあカードで出てくることも、何か意味があるのかも知れません。良かったらもう一枚引いてみますか」
 裕子はいかにもすまなさそうに、もう一枚カードを引かせた。
 笑いながら女が引いたのは、羽の生えた妖精のカードだった。裕子は両手で顔を覆い隠して小さな声を出した。
「私のカードよ。なんて意地悪なの? 息子さんと彼女がぴったりの相性だなんて、私、なんとお伝えしたらいいのよ」
 言葉の後半はほとんど芝居かかっていた。それでも、相手の女はじっと裕子を見ていた。裕子は顔を上げてすがるような視線をぶつけた。
「ほんとに、私、どう言っていいのか分かりません。ただ、このカード前にも出たんです。奥様と同じように息子さんの相談でした。ああ、どうしよう。同じ苦しみは味わっていただきたくないし……」
 裕子がささやくように言った。
「その方のときは、どうなったんですか」
 女が身を乗り出す。
「はい。ほんとに同じように、悪い女だとお伝えしたんです。カードのメッセージを無視して」
「それで」
 女は食い入るように裕子を見た。裕子はつばを飲み込んだ。
「息子さん、相手の女性と駆け落ちしました」




Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:56│Comments(0)
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