2013年05月03日

ひらひら村の夕陽53

 男は裕子の店によった。カウンターに席を取ると気の毒なほど小さくなった。
「ねえ。奥さんとは、困ったこともちゃんと話せる?」
 裕子はコーヒーを出しながら、小さな声で言った。男は小さくうなずいた。それから話し出す。
「結婚して、すぐに上の子が出来ました。それまで派遣だったんですが、子どものためにと、衣料メーカーにつとめました。ちょうど子どもが生まれたころに、単身赴任でこの町にきました」
 男はそこですがるように裕子を見た。
「じゃあ、ほとんど夫婦になるまえに、父親になって単身赴任したわけね」
 裕子は言った。男はうなずいた。裕子は分かれた夫を思い出した。そう言えば、裕子も夫と夫婦になる前夫と向かいあってなかったことを思い出した。
「なんか分かる気がするな。私も離婚する前はそんなだった」
 そういって、15年まえのことを話しはじめた。子どもがいたこと、夫が姑ばかり見ていたこと、自分は自分のことしか思ってなかったこと、(これは後になって気づいたが)を話すとなぜか涙がこぼれてきた。
「裕子さん。なんか分かります。ぼくたち、けっこう似ているんですね」
 男は苦笑いを残して帰っていった。

 裕子はひとりになると、カードを引いてみた。
 太陽のカードがうれしかった。



Posted by ひらひらヒーラーズ at 09:29│Comments(0)
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