2012年10月02日

さらわれたって屁の河童8

 目が覚めて、ぼくは体中汗をかいていたのに気づいた。タオルケットがまきついて、チョウのサナギみたいになっていた。
落ちつくと机の上の皿を見た。やっぱり、カッパは怒っている。それも、夢がもし正夢だったら、カッパのテロリストかも知れない。ぼくは一度身震いして、皿に水を張った。あたりを見回しながら、一階へ行ってパンをかじってから着替えた。父さんはとっくに出かけていたし、母さんももうパートに出たあとだった。ぼくは体中を目にしたくらい、まわりに気を配った。学校のプールもさぼった。トイレはぎりぎりまで我慢した。塾でゆうとに夢の話をした。
「しゃれにならんぞ。明日、図書館でカッパのこと調べようぜ」
 次の日、ぼくとゆうとは、図書館でカッパのことを調べた。カッパは小さくても、すもうが強いこと、泳いで川で泳いでいると、おしりから手を入れて、きもを抜かれる、と書いてある本があった。
「なあ。きもってなんだ」
 ゆうとが言った。ぜんぜん笑ってない。
「おしりから抜くってことは、やっぱり、内臓だよね。腸かな」
 言いながら、ぼくは、昨日風呂場で見た緑色の手を思い出して、背中がぞくっとした。ぼくの手にはめたカッパの手が、ぼくの腸を取っちゃう。そんなのあんまりだ。あと、カッパの弱点は、頭の皿の水がなくなると、動けないらしい。
その日からは、もちろん毎日、皿に水を忘れなかった。それからは、カッパから電話が来なかった。ぎゃくにそれが不気味だった。
 
  


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2012年10月02日

さらわれたって屁の河童7

「さっき、風呂場で変な声が聞こえたんだ。水かきのついた手が、出てきた」
 そこまで言うと、ゆうとは逃げだそうとしたけど、腕をつかんで無理やり家に入れた。いっしょに風呂場を見に行ったけど、もう声もしなかったし、カッパの手もなかった。
「なあ、カッパのやつ、どこかで見はっててんだよ。ちゃんと、約束守った方がいいよ」
 ゆうとは部屋の中を見回しながら言った。カーテンのしわまでカッパに見えてくる。トイレにに行くのも、水を飲みにいくのもこわかった。
 けっきょく、母さんが帰るまでゆうとにいてもらった。
 その夜、夢を見た。ビルの屋上にある貯水槽のへりに、カッパが五匹並んで座っている。それぞれ、手に携帯電話とピストルを持っている。そして頭には皿がなかった。
「ワレワレハ モウ ニンゲンタチヲ ユルスワケニハ イカナイ」
 一番大きいカッパが叫んで、他のカッパたちは両手を上げて答えた。一匹がぼくをギロリとにらんだ。ぼくは必死でもがいた。もがくほど、何かがからみついてくる。
  


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