2012年08月15日

青い炎を灯せ116

「ありがとう。こうして、国を思ってくれる人があれば、大丈夫です」
 明江は男達に頭を下げた。中の一人が笑って手をふる。
「自分たちの国を護るんです。誰にお礼を言われることもありません」
 明江は大きくうなずいた。玄奘三蔵も横で微笑んでいる。
「私は御仏に祈りましょう」
 そう言ってお堂に入っていった。お堂の中から読経が聞こえてくるとその屋根をやぶって、黒い竜が舞い上がった。竜はいやな笑いを浮かべて明江に迫ってくる。
「光明子。思い知るがいい。国はこうして荒れていくのだ」
 竜の口からは生臭い風がふいた。明江が大声をあげた。
「大津の皇子。あなたのうらみがどんなに深いか知らない。でも、私は負けない」
 明江の声に同調して、鍬や備中を持った男達が両手をふりあげる。
「どんな敵がせめて来たって、俺たちは護る。俺たちが作った畑なんだ。寺や建物も俺たちが造ったんだ」
 男達が口々に言った。竜は身を翻して男達に迫ってくる。男達は鍬をふりあげた。
 そんなことを何度かくり返すうちに、お堂から三蔵が出てきた。大きな数珠をふりあげて竜に投げつける。数珠ははじけて竜とともに消えた。
「たいへんだ。賊軍が押し寄せているらしい」
 馬に乗った官人が顔色を変えて飛び込んできた。  


Posted by ひらひらヒーラーズ at 08:09Comments(0)